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今日も今日とて後始末:破綻したSIer業界の内実

IT業界暗黒史 公開: 2026.03.10
#オフショア開発 #技術的負債 #開発現場

今日も今日とて後始末

またしても私は問題プロジェクトの「後始末」を頼まれた。クライアントが直接選んだ開発会社による開発案件で、すでに大きく行き詰まっている。システムはフロントエンドがReact、バックエンドがPython+Djangoで構築されていると聞いている。

最初に求めたのは当然、設計書だ。だがそれが存在しない。おそらく作成する能力が開発チームに欠けているのだろう。要件定義書に至っては、初めはA4用紙1枚で済まそうとされた。私が作成した見積依頼書が20ページに及ぶのに対し、彼らが提出した「システム設計書」と称するものはPowerPointで4ページのみ。これは営業資料の間違いだろうと一蹴せざるを得なかった。

そもそもこれは私が選定した業者ではない。クライアントが選定した業者だ。当初は私抜きで進められていた案件で、関わりたくなかったから助かったと思ったら、甘かった。グダグダでぐちゃぐちゃで、困窮したクライアントから後始末と尻ぬぐいを依頼された。

開発会社の営業は何でもハイハイ、開発は「何も聞いてません」。社内で確認すべきことまで、担当者が捕まらないからと、こちらに聞いてくる始末だ。ちなみに開発会社の社長が営業担当で、これで上場を目指しているとか、VCから資金調達しているとか言っている。

ドキュメントの欠如と属人化の極み

Pythonは使い慣れているが、Djangoは使ったことがない。私はFastAPIを使っているからだ。納品されたシステムのREADME.mdに書いてある通りにデプロイする。説明は英語で書いてある。オフショアだと肝心なドキュメントが日本語で書かれていないことが多い。

手元にあるのは、コンテナの起動方法とデータベースのマイグレーション手順だけ。アプリケーションの構造、データモデル、ビジネスロジック、APIの仕様書?そんなものはどこにも見当たらない。

いわゆる「属人化」の極みだ。このシステムに手を入れるには、作った人間の頭の中を解読するしかない。しかもベトナムの開発チームなので、私との直接コミュニケーションは許可されていない。

管理者SEという名の通訳

日本のSIer業界には「管理者SE」という役職が存在する。彼らの多くは自らコードを書くことはなく、海外の開発者とクライアントの間の「通訳」として機能する。しかし、その「通訳」は技術を理解していないことが多い。

私が関わったプロジェクトの管理者SEは、フロントエンドとバックエンドの違いすら理解していなかった。Reactのコンポーネントがサーバーサイドで動くと思っていたのだ。

そして彼らは「技術のことはわからないので」と平気で言う。それなのに技術的な決定権は彼らが持っている。なぜなら、クライアントとの窓口だからだ。

このねじれ現象が、日本のIT業界の技術的負債を増大させている。技術を理解しない人間が意思決定を行い、実装を理解しない人間が検収を行う。そして問題が発生すれば、技術者が責任を負わされる。

「使い慣れた」という盲点

別案件でこんなことがあった。PHPでの開発案件で、帳票出力に私はAIと相談してPlateとDomPDFを採用した。帳票のフォーマット以外は私が実装してから担当者に引き継いだ。担当者はPHP+Laravelの開発を10年以上続けている猛者だ。その彼がミーティングで驚いたように言った。

「このDomPDF、すごいな。今まで知らなかった。PlateとDomPDFの組み合わせで、すごく簡単に帳票が作成できる。今作っている別案件も、保守を考えてBladeからPlateとDomPDFに変更します。」

私はAIと相談して最新の情報を取り入れた。彼は使い慣れている既存のライブラリを使っていた。人間は使い慣れたツールが古くなっていることに気づくために、意識的に情報をアップデートしなければならない。AIはその作業を自然にやってくれる。10年選手のベテランでも驚くほどの差が、そこから生まれた。

後始末の日々は続く

設計書のないシステム、ドキュメントのない実装、連絡の取れない開発者。この状況でクライアントが望む機能を追加し、バグを修正する。これが日本のIT業界の現実だ。

今日も今日とて、後始末の日々は続く。

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