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年功序列の壁と技術力の値段

IT業界暗黒史 公開: 2026.03.10
#人月商法 #IT業界 #年功序列 #技術評価

日本のIT業界では、技術力と報酬が一致しない。年齢で単価が決まり、効率的に問題を解決するほど評価されない。35年の現場で何度も直面した、この構造的な歪みについて書く。

年功序列の壁

25歳で独立・起業した後、大手予備校のシステム開発案件を担当することになった。日本を代表する電機メーカーが請け負った案件が炎上し、その火消しを依頼されたのだ。

案件の状況は、チームの8割が開発言語を未習熟という単純なスキル不足が原因だった。私は2次請けとして参画し、1次請けから時間8000円の単価で契約した。しかし2月なのに勤務時間は300時間を超え、7000円に値下げされた上、予算切れのためわずか1カ月で契約終了となった。

ここでまさかの展開があった。電機メーカーの本部長が直接契約を持ちかけてきたのだ。

「今の状況で君に抜けられたら困る。システムが完成するまで、直で契約してくれ。」

しかし、私の年齢を聞いた途端、本部長の態度が変わった。

「単価は問題ないんだが…25歳だと、当社の最高等級を適用しても、半額しか払えない。」

結果として単価3500円での1カ月限定契約となった。大手企業との取引実績として評価するよう言われたが、同じ仕事、同じ価値を提供しても、年齢によって評価が半分になる。これが日本企業の年功序列だ。

5分の仕事に値段はつかない

21世紀に入ってからの出来事だ。取引先の大手学習塾から、10万件のCSVファイルをグループ単位で分割する相談を受けた。グループ数は約1000件。

別の取引先がExcelで手作業による処理を試みたが、一晩かかっても完了せず、データの混在で収拾がつかない状態になっていた。その手作業への支払いは15万円だった。

私はVisual C++でプログラムを作成した。実作業時間は5分。1時間後には納品できた。しかし私への支払いはゼロだった。感謝の言葉だけだ。

一晩かけても終わらない手作業に15万円。5分で完了する技術的な解決に0円。非効率な作業に高額な報酬が支払われ、効率的な解決には適切な評価がなされない。日本では「額に汗して働くこと」が美徳とされ、短時間で成果を上げることは「楽して稼ぐ」と見なされる。この価値観が、技術力の正当な評価を阻んでいる。

消耗品としてのエンジニア

こうした環境で何が起きるか。エンジニアは問題の発見を報告しなくなる。改善提案を諦め、最低限の作業のみを実施するようになる。組織には技術的負債が蓄積し、品質が低下し、イノベーションが停滞する。

各種調査からも、日本のエンジニアの自己研鑽率の低さ、「学ばない、学べない、学ばせない」状況、給与満足度の低さが確認できる。50代でも給与に満足しているエンジニアは2割程度だという。

エンジニアは利益を生み出すための道具。消耗品としての扱い。長期的な育成の軽視。安価な労働力を確保し、長時間労働を常態化させ、高額で顧客に提供する。この構図は35年前から変わっていない。

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