flayd.jp
メニュー

WordPressフリーランス業界の闇

IT業界暗黒史 公開: 2026.03.10
#フリーランス #セキュリティ #開発現場

35年以上のエンジニア経験を通じて、WordPress開発業界の深刻な実態に直面してきた。特に中小企業向けの開発現場で頻発する問題と、その背景にある構造的な課題について書く。

技術力の著しい格差

WordPressはその手軽さゆえに、システム開発の基礎的な経験もないまま独学でプログラミングだけを学んで仕事を請け負うケースが散見される。プログラミングの技術はあっても、エンジニアリングの基本概念や開発プロセスを理解していないフリーランスが多い。

これは地方に限った話ではない。リーマンショック以降、IT業界全体で設計工程が省かれ、要件定義書から直接実装する分業化が定着した。この時代に育った世代は、設計よりも管理、UMLよりもPMBOKという環境で経験を積んできた。フルサイクルで開発を回した経験がそもそもない。その世代がフリーランスとしてWordPress開発に流れ込んでいる。

サイバー攻撃で10件全消失

最も衝撃的だった事例がある。外注委託した10件のホームページが納期直前にサイバー攻撃を受け、全データが消失した。さらに同時期に開発中だったECサイト3件も影響を受けた。

WordPressの脆弱性を突かれてシステムを乗っ取られた可能性が高い。当時使用していたKUSANAGIの特性上、一つのシステムが侵害されると同じ環境で運用している他のWordPressサイトにも被害が及ぶ。結果としてすべてのサイトが連鎖的に消去された。

その後も年に一度程度の頻度で同様の攻撃が発生し、サーバーの凍結やウェブサイトの消滅が続いた。消失したサイトの復旧、顧客への説明、代替システムの緊急構築、セキュリティ対策の見直し。予定していた案件もすべて中断せざるを得なくなり、事業継続に深刻な影響を及ぼした。

連絡が取れなくなる開発会社

外注先の業者は、ホームページは何とか納品したものの、ECサイトについては完全に放置した。開発会社の社員が「社長と連絡が取れない」と言い始め、わずか半月で外注先の誰とも連絡が取れない異常事態に発展した。オフィスに直接足を運んでも不在。以後、一切の連絡が取れないまま状況は暗礁に乗り上げた。

安請け合いして実現できなくなると連絡が取れなくなるケース。顧客に確認せず自分の想像で「えいや!」と作業を進め、クレームが来たら対応すればよいという姿勢。素人相手なら通用するかもしれないが、プロの顧客には通用しない。

フリーランスエンジニアの身元確認の難しさも深刻だ。架空の事務所所在地を申告する、実在しない番地を使う、農地を事務所として登録する。オンライン面接では「マイクの不調」を理由に音声での会話を避ける。信頼性を大きく損なう行為が後を絶たない。

地方の開発現場

地方ではこの問題がさらに顕著になる。「単体テスト5年」のような経歴が当たり前で、要件定義から運用までを一貫して担当した経験のある人材はほとんどいない。いたとしても、若い頃に都市部で大企業の案件に関わっていた人たちだ。

2012年頃、ある地方の業者が「WordPressの伝道師」としてウェブ制作を請け負った。しかし納品されたのはプレーンなWordPressをインストールしただけのVPS。実質的に何も作っていなかった。別の案件では、WordPressサイト制作を発注したものの受託者に技術力がなく、「担当者がインフルエンザに罹った」「環境が整っていない」と納期を先延ばし。形ばかりのサイトが届いたが使い物にならず、前払いした費用も戻らず、結局自分ですべて作り直した。

私は富士通の制御系システムのプロジェクト出身で、無停止装置など高度な要件を満たす厳しい現場で鍛えられた。しかし地方ではそのような環境は極めて稀だ。エンジニアリングのスキルが共有されず、人間関係とローカルな商圏だけで案件が回る。技術的な評価よりも空気を読むことが求められ、筋を通すタイプの人間は都合よく利用され、泣き寝入りすることになる。

こうした経験から、私は地方の案件を絶対に請けないと決めている。

この記事をシェアする

関連記事